時効期間が経過すると、消滅時効の援用が可能となりますが、これはあくまで、債務者の側から債務を消滅させることができる状態になるというだけで、時効期間の経過とともに当然に債務が消滅するわけではありません。

 

 したがって、時効期間経過後も、債権者は債権行使のため、債務者に請求や督促をすることもできます。これは違法行為ではないため、場合によっては、訴訟などの法的措置が採られることもあります。

 

 では、請求を受けた債務者が、債権者に電話をして「支払います」と言ってしまった場合、どうなるのかが問題となりますが、この場合、もはや時効を援用できなくなり、債権者の主張通りの支払義務が継続することになります。

 

 最近、ある貸金業者から時効期間経過後に督促を受け、その業者に電話して支払方法について尋ねた方から時効援用のご依頼がありました。そして、時効援用通知を送付したところ、その業者は「債務者が電話で支払う旨を述べた以上、債務承認になるので、時効援用は認められない」と回答してきました。そこで、「録音テープがあれば聞かせてほしい」と伝えたところ、「聞かせることはできないが、支払う旨を述べた・述べなかったで言い争っても仕方がないので、和解したい」と提案され、債務額よりかなり低い金額で和解したという案件がありました。債権者の側でも、はっきりと債務承認があったと判断できない事案だったため、このような曖昧な決着となった次第です。

 

 依頼人の方によると、「電話口で支払方法を訊いただけで、支払う旨ははっきり述べていない」とのことでしたが、仮に法廷で白黒つけようとしたらどうなるかわかりませんし、リスクもあるため、依頼人の方と相談した上で和解させていただきました。

 

 いずれにしても、長期間支払をしていない債務があれば、ご自分で対応せず、専門家にご相談いただいた方が無難だと思います。

土田司法書士事務所