自己破産をすると、原則として破産申立人の財産をお金に換えて、それを債権者に分配することになります。では、申立人が所有する自動車も手放す必要があるのでしょうか。

①自動車を一括払いで購入した、または自動車ローンを完済している場合
 
 
岐阜地方裁判所の扱いでは、自動車の価値が20万円以下の場合は、その自動車を手放す必要はありません(ただし、他の財産と合わせて20万円を超える場合は手放さなければならない場合もあります)。

 また、普通車と小型車は、初度登録から7年経過で無価値と判断されるため、査定価格に関係なく自己破産でも自動車を失うことはありません。

 軽自動車と商用車は、初度登録から5年経過で無価値と判断されます。
 
 中型車と大型車については、査定書で評価されるため、初度登録から何年経っていても、自己破産の申立てにあたって査定書を添付して裁判所の判断を仰ぐ必要があります。

②自動車ローンを支払中で、かつ「所有権留保」が付いている場合

 自動車ローンの残高がまだ残っており、債務整理に着手した時点でまだローンを支払中の場合、その自動車に所有権留保がついているかどうかを確認します。

 所有権留保とは、ローンを完済するまでその所有権を形式上売主に留めておくもので、担保の一種です。所有権留保が付いているかどうかは、車検証などで確認できます。

 もし所有権留保が付いていれば、債務整理を始めた時点で自動車を使用する権利を失い、形式上の所有者に引き上げられることになります。

 そして、ローン残高から自動車の現在査定額を差し引いた金額が残債務となり、それを自己破産によって免責することになります。

 ただし、この場合でも、自動車の価値が20万円以内であり、かつ、ローン残高も僅少で一括してローン残高を完済できる場合には、債権者に一括弁済することによって、自己破産をしても自動車を手元に残すことは可能です。

 債務整理を始めた後は、原則としてすべての債権者が平等に扱われ、一部の債権者にのみ弁済することはできませんが、自動車は生活必需品であり、価値の低い自動車であれば債権者に分配するまでもないので、新しい自動車を購入するよりも、従来から保持する自動車を維持した方がよい面もあるからです。

③自動車ローンを支払中で、かつ「所有権留保」が付いていない場合

 自動車ローンを支払中でも、所有権留保が付いておらず、実質的にも形式上も自動車の所有者である方が稀にいます。

 その場合は、①と同じ扱いになり、自動車に価値があれば手放す可能性もありますが、そうでなければ自動車を手元に残したまま、ローン残高は自己破産によって免責されることになります。

土田司法書士事務所