債務整理の方針決定にあたっては、まず利息制限法所定の法定利率での引き直し計算後の債務額がどの程度になるかを推測することが必要です。初回借り入れ時から考えて、おおよそどの程度まで債務が減るか、過払いになりそうかなどを推定することになります。
 
  多重債務により支払不能となったとき、自己破産申立が可能になります。自己破産の場合、免責によって債務がなくなるので、あえて支払を要する任意整理や個人再生を選択する必要はなく、自己破産申立が相当と言えます。

  では、どのような場合に支払不能と言えるのかが問題となります。

  個人再生の場合、原則として支払期間は3(36回)年で、任意整理では若干幅がありますが、やはり3年を超える合意は困難と言えます。そこで、依頼者の毎月の支払可能額の3年間分(36回分)が債務総額を下回るなら支払可能、上回るなら支払不能と言えます。毎月3万円が支払可能額の場合、3年では108万円が支払総額、毎月5万円が支払可能額の場合、3年では180万円が支払総額になります。

  同じ分割支払の場合でも、任意整理は、法的手続を経る必要がないので、債務整理の方法としては簡易ではありますが、各債権者の同意を要するというデメリットがあります。

  他方、個人再生は、法的手続きを要するので債務整理の方法としては煩雑ですが、債権者の反対があっても、大幅減額をする再生計画が認可されるというメリットがあります。
  すなわち、給与所得者等再生の場合、債権者からの意見聴取で足りるというメリットがあります。小規模個人再生の場合、決議に対する不同意が債権者数で2分の1未満、債権額で2分の1以下であれば可決されるという消極的同意で足ります。

  では、任意整理と個人再生のどちらを選ぶべきかが問題となります。
  個人再生においては、債権額に応じ、最低の弁済金額が定められています。これは、基準債権総額の20%を限度とし、最低が100万円、上限が300万円です。ただし、基準債権総額が100万円未満の場合には、基準債権総額全額が最低弁済額となります。例えば、基準債権総額が300万円の場合、最低弁済額は100万円となりますし、基準債権額が80万円の場合、最低弁済額は80万円となります。

  したがって、債務総額が100万円以下の場合、任意整理でも個人再生でも全額を分割払いする必要があるので、原則として、手続の簡単な任意整理を選択することになります。より厳密には、個人再生委員の報酬や司法書士報酬の増加分も考慮する必要があるので、債務総額が百数十万円以下の場合は、任意整理を選択することになります。

  債務総額が百数十万円を超えると、支払総額としては個人再生の方が低額となります。たとえば、債務総額が190万円の場合、任意整理では原則として190万円全額の分割払いとなりますが、個人再生であれば、最低弁済額100万円の分割払いで足りることになります。したがって、原則として、個人再生を選択することになります。

土田司法書士事務所