過払い金返還請求の場合、持参債務の原則(民484条)からして、過払い金請求者の住所地が義務履行地となるので、業者(被告)の住所地だけでなく(民訴4条1項)、過払い金請求者の住所地の管轄裁判所にも提訴できます(民訴5条1号)。

 したがって、請求者の住所地がある場所の裁判所に提起するのが便利と言えます。

 また、一人が複数業者に対してまとめて提訴する場合、「訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくとき」(民訴38条後段)に該当するので、複数の業者がいずれも同一の管轄に属することが必要となります。

 例えば、岐阜市内に住所のある依頼者が、東京23区と名古屋市内の2業者に提訴したい場合、義務履行地の岐阜地裁には提訴できますが、2つの業者が共通して普通裁判籍をもたない東京地裁と名古屋地裁には併合訴訟の提訴ができません。

 業者との契約書では、「当事者間でトラブルがあったときは、本店所在地を管轄する裁判所とすることに合意します」といった合意管轄(民訴11条)がなされていることが多いようです。

 しかし、借入に際し、借主がこのような「合意」の意味を正確に認識していたか疑問であり、その効力を是認することには問題があります。この点については、株式会社シティズが貸主として合意裁判所への移送を求めた多くの事例があります。

土田司法書士事務所