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 貸金業法の要請する保存義務に反した結果を借主の不利に反映させるのは、保存義務を定めた趣旨に反しますが、原則として、借主側の記憶による取引経過の主張が認められるべきです。
 この点について、下級審判例は、3年間の業務帳簿保存義務期間の経過により保存していないとして、文書提出命令に応じなかった事例につき、「業務帳簿は、商業帳簿に該当するため、帳簿閉鎖の時から10年の保存義務があるところ、これを3年で破棄したのであれば、その不利益は貸金業者において甘受すべき」とし、推定計算で請求した原告の主張を認容しました。

 貸金業者があくまで取引履歴を開示しない場合は、訴訟を提起せざるをえませんが、提起したにもかかわらずなお履歴を開示しない場合、文書提出命令を申し立てることになります。この場合、文書が存在していることは、借主の側で証明しなければなりませんが、問題となっている時期に借り入れないし返済をしたことが一部でも証明できれば、帳簿の保存義務を負う業者としては、保存期間内であれば帳簿を保存していると推測されるので、破棄などの証明をしなければなりません。

 なお、前述の平成17年最高裁判決により、原則開示義務が認められたので、今後は文書提出命令にまで至る事例はほぼなくなると思われます。

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土田司法書士事務所