前回の続きです。次に、遺産分割協議が成立したものの、具体的な遺産分配をする前に自己破産を申し立てた場合について説明します。

 

 この場合、遺産の中に預貯金や不動産などがあり、破産者がそれを遺産分割協議によって取得すると、預貯金の払戻手続や不動産の相続登記をすることになりますが、それをする前に破産を申し立てたとしても、裁判所に対し、財産として報告する必要があります。

 

 自己破産を申し立てる場合、裁判所に財産目録を提出しますが、その中の項目として「遺産」があるため、破産者が遺産分割協議の結果相続した遺産を具体的に記載します。そして、個別の遺産の中で20万円以上のものがあれば、管財事件となります(岐阜地方裁判所基準)。

 

 管財事件となった場合、破産手続開始決定と同時に管財人が選任されるので、その管財人が、破産者の法定代理人として、遺産の具体的な分配を受け、不動産であれば相続登記をし、その後、処分して各債権者に配当手続をすることになります。

 

 ただ、実際は、具体的な遺産分配手続が完了していない段階で破産を申し立てることは稀であり、特に弁護士や司法書士を介して自己破産を申し立てる場合では、遺産分割協議を合意解除してやり直すよう助言を受けるのではないでしょうか。

土田司法書士事務所